2020.10.08
企業会計上、過年度に発生した損失又は費用を前期損益修正損として当期の特別損失に計上することが認められています(ただし平成23年4月1日以後開始事業年度からは過年度遡及会計基準の導入により原則として認められなくなりました。)法人税法上も一般に公正妥当と認められる企業会計慣行を妥当なものとしてその処理を認めているところですが、過年度の費用または損失について当期の損金とする事により、課税上著しく公平を欠くような場合にまでその会計処理を認めることはしません。判例において次のように述べ、損金算入を否定(原告棄却)しています。公正処理基準(法人税法22条第4項)とは、客観的に規範性を持つ公正かつ妥当と認められる基準という意味であり、確立した会計慣行を広く含むと解されているが、企業会計原則の内容や確立した会計慣行が必ずしも公正処理基準となるとは限らない。会計慣行を含む企業会計は、ゴーイングコンサーン(企業が将来にわたって継続するという継続企業の原則)としての企業の成果、収益力、将来性等を予測させる情報の提供を目的とするのに対して、法人税法の目的は、歳入の公平な徴収、つまり負担の公平な分配あると同時に、国庫の歳入を保障することにあり、両者はその目的を異にしている、とし、法人税法の企図する公平な所得計算という要請に反するもの、あるいは適正公平な税収の確保という観点から弊害がある会計処理方式は、公正会計処理基準に該当せず、法人が収益等の額の計算に当たって採った会計処理の基準が公正処理基準に該当するといえるか否かについては、法人税の適正な課税及び納税義務の履行の確保を目的とする法人税法独自の観点から判断されるものと解するのが相当である、として過年度損益修正損の損金算入を否定しました(平成27年9月25日東京地裁判決)。
したがって過年度の損金となるべき費用または損失がある場合には、原則として過去の決算書を修正して更正の請求に持ち込むことが必要となります。
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